【辻文庫蔵復元改修】(山梨)

設計監理:辻デザインワークス
工法:小舞下地漆喰塗り

 米蔵、味噌蔵、醤油蔵、文庫蔵など、長い日本の歴史の中で、生活の風景に融け込み、景色と文化そのものを担ってきた建物—土蔵—、我々は全国津々浦々にその美しい姿を確認することが出来ます。大切な物の貯蔵に重宝されてきた土蔵は調湿性能に優れ、人為的に作り出されたエネルギーを使用せずとも、厚さ30cmほどある重厚な土壁によって一年を通して室内の湿度を一定に調節し、米、酒、しょうゆ、漆、書物や衣類など、繊細で過度の乾燥や湿気を嫌うさまざまな家財を守り続けてくれます。
 近年、建物ストックの有効活用や環境への配慮から、土蔵建築が再び評価され始めています。弊社では予算や工期の問題に歯向かい、土蔵の工法を見直し、施主様の意向に沿った見積り提案を確立させて参りました。
 辻文庫蔵は、経年劣化で痛んだ土蔵を修復し、施主様と相談しながら、大事な箇所はとことんこだわり、その他の部位では建物価値と機能を損なわない程度に省略して施工方針を決めました。土蔵は他の建築とは異なり、左官職人が棟梁であり、設計者なのです。